自作PCのパーツは、この順番で決める — 何をやりたいかが決まらないと、一つも選べない

自宅で使っているPCは、自分で組んだものです。Escape from Tarkovという、かなり重いゲームを動かすために組みました。
そのうえで、先に書いておきます。重いゲームをやるのでなければ、自作PCである必要はありません。
書きものも、動画を見るのも、たいていのことは売っているパソコンで足ります。自作は、部品を自分で選べるかわりに、選ぶ手間と、動かなかったときの責任を全部引き受ける買い方です。そこまでやる理由が無いなら、やらないほうが早い。
しかも、いまは部品が高くなっていて、時期としてもあまり良くありません。安く上げたいのが目的なら、いまは向いていないと思います。
それでも組むと決めた人に向けて、僕がパーツを決めるときの順番をそのまま書きます。
まず決めるのは、パーツではない
一番大事なのは、そのパソコンで何をやりたいかをはっきりさせることです。ここが決まらないと、あとの一つも決まりません。
「速いパソコンが欲しい」では決まらないんです。何がどう速ければいいのかが要る。
僕の場合は、やりたいゲームが先にありました。そのゲームを、どの解像度で、毎秒何コマで動かしたいのか。そこまで決めてはじめて、グラフィックボードに必要な性能が出てきます。この話は前に別の記事に書きました。
ゲーム以外でも同じです。動画を編集したいのか、ゲームをしながら配信もしたいのか、静かな部屋で使いたいのか。目的が違えば、金を寄せる場所が変わります。
AIを動かしたいなら、自作が答えとは限らない
最近よく聞くのが、AIを自分のパソコンの中だけで動かしたい、という目的です。文章を書かせる言語モデルだけではありません。画像を作るもの、動画を作るものもあって、こちらは中身の作りが言語モデルとは別物です。ただ、パソコンに求めるものはよく似ています。
ここは注意が要ります。自作PCが不利になる場面があるからです。
どれを動かすにしても、最初に効くのは容量です。モデルが載りきらなければ、そもそも動かない。グラフィックボードを積む自作PCの場合、その容量はグラフィックボード側のメモリ、つまりVRAMで決まります。ここが厳しくて、32GBを積んだグラフィックボードとなると、値段が一気に上がります。
別のやり方があります。ユニファイドメモリというのは、CPUとグラフィックスが同じメモリを分け合う作りのことです。Macがそうです。Windows側にも同じ考え方のPCが出てきていて、メモリを128GB積んだうえで、そのうち96GBをグラフィックス用に回せる、というものもあります。
容量だけで見れば、こちらのほうが安く積めます。同じ金額で、載せられるモデルの大きさが変わってくる。
ただし、速さは別です。専用のグラフィックボードのほうが上、というのは調べた範囲では覆っていません。ただ、僕自身はまだローカルで言語モデルを動かしていないので、ここは借りてきた話です。
大きいモデルを動かしたいなら容量で選ぶPC、速く動かしたいなら自作。そういう分かれ方になります。どちらにしても、安くはありません。
予算の枠を置いてから、CPU、グラフィックボード、メモリ
目的が決まったら、次は予算です。総額の枠を先に置いて、そこから割っていきます。
金額の目安は書きません。僕が組んだときの値段が、もう参考にならないからです。特にメモリは、僕が買ったときとは値段がまるで変わっています。比率だけ言っておくと、いちばん厚く積んだのはグラフィックボードで、その次がCPUでした。
僕が決める順番は、CPU、グラフィックボード、メモリ。この三つが先です。
CPUで決まるのは、まず土俵です。 インテルにするか、AMDにするか。ここを決めないと、この先の選択肢が二つに割れたまま進むことになります。それと、グラフィックスを内蔵しているCPUを使うのか、使わないのか。あとは、どれくらいの処理速度が要るのか。一番大事な部品なので、ここを先に置きます。
グラフィックボードで見るのは、速度と容量です。 速さのほうは分かりやすいのですが、抜けやすいのは容量、VRAMのほうです。どれだけ要るかは、やりたいことで変わります。
メモリで決まるのは、規格と容量です。 いまはDDR5が主流ですが、DDR4もまだ流通しているので、どちらで組むかをここで決めます。ただ、これはCPUの側でもだいたい決まります。新しいソケットはDDR5しか受け付けないものが多く、一つ前の世代に両対応のものが残っている、という並びだからです。容量のほうは、自分がどれだけ使うか。僕は潤沢に入れておきたいほうで、というのもブラウザのタブをいくつも開くと、それだけでかなり食うからです。重いゲームだと、グラフィックボードが描画を持っている一方で、メモリのほうも普通に食います。
そして、この三つは独立していません。狙うところから逆算すると、セットで決まります。 このゲームを、この解像度で、毎秒このコマ数で動かしたい。そこまで決めると、グラフィックボードはこれ、CPUはこれ、という組み合わせが見えてきます。
実際には、行ったり来たりです。CPUを一つ上げると予算が足りなくなって、グラフィックボードを見直して、またCPUに戻る。一度で決まることはありません。
この三つが決まると、あとの部品は自動的に絞られます。逆にここを後回しにすると、先に選んだものを何度も選び直すことになります。
三つ決まると、マザーボードが決まる
CPUを決めた時点で、使えるマザーボードの土俵が決まります。ソケットが合わないと、そもそも刺さらないからです。AMDならAM5かAM4、インテルならLGA1851かLGA1700といった規格があって、ここが違うマザーボードには載りません。そのうえで、載っているチップセットで出来ることが変わります。グラフィックボードとメモリは、そこに載る大きさと本数の話になります。
だからマザーボードは、自分で選ぶというより、決まる。ここまで来ると、候補は数えるほどしか残りません。
一番の落とし穴は、マザーボードとメモリの相性
僕が一番大事だと思っているのは、ここです。
メモリは、規格が合っていれば動く、とは限りません。相性というものがあって、ちゃんと刺さっているのに起動しない、ということが起きます。しかも、どちらが悪いのかが分からない。
対策はあります。マザーボードのメーカーが、そのモデルで実際に動作を確認したメモリの一覧を公開しています。QVL(Qualified Vendor List)と呼ばれるものです。マザーボードのモデルが決まったら、メーカーのサイトでその一覧を開いて、そこに載っているものからメモリを選ぶ。
一覧に無いメモリが動かない、という意味ではありません。逆に、一覧には市場でまず手に入らないものも混じっています。それでも、確認された組み合わせを選んでおけば、動かない一晩を過ごす確率はかなり下がります。
順番としては、メモリを買うのはマザーボードを決めたあとです。ここを先に買うと、この確認ができません。
電源は、ワット数だけで選ばない
電源も大事です。ここをけちると、ほかを全部いいものにしても不安定になります。
ワット数は、積むものから逆算します。グラフィックボードとCPUの消費電力を足して、余裕を乗せる。あとで一つ上のグラフィックボードに載せ替える気があるなら、その分も先に見ておくと、電源ごと買い替えずに済みます。
ただ、ワット数だけでは決まりません。同じワット数でも、中身の質は違います。
長く使われている目安が80 PLUSという認証で、変換効率でブロンズからチタニウムまでランクが付きます。ただこれは、決まった負荷でしか測っていません。もう一つCyberneticsという認証があって、こちらは負荷を細かく振って平均の効率を出すのと、動作音を実測してランクを付けます。静かさまで見たいなら、こちらのほうが情報が多い。
それと、最近のグラフィックボードは電源側のコネクタが変わりました。ATX 3.1という規格に対応したものを選んでおくと、変換ケーブルを噛ませずに済みます。
僕は、電源だけは必ずネットで調べてから買います。安定していると言われているものを選んでおく。ここは自分で使ってみるまで分からない部分が大きいので、人が長く使った評価を借りるのが早いんです。
探してみると、有志がまとめた格付けの表というものが出てきます。表計算のシートに何百というモデルが並んでいて、AからFまでのランクが付いている。面白いのは、同じ型番でも出た時期によってランクが違うことです。中身が途中で変わるからで、名前だけ見ていては分からない。こういうものは、メーカーの説明を読んでいても、まず出てきません。
僕が見たものは、いまは更新が止まっています。それでも、探しにいく価値はありました。
案外抜けるのは、大きさ
仕様と相性は、みんな一生懸命に調べます。ところが、抜けやすいのが大きさのほうです。
特にグラフィックボードは、いまかなり大きい。しかも、そこに電源のケーブルを挿します。ケースに余裕がないと、板そのものは入るのに配線が通らない、ということが起きます。無理に押し込んで、蓋を閉められないまま使うことにもなりかねません。
なので、ケースは余ったお金で最後に決める、というわけにはいきません。積むものが決まった時点で、それが入るか、配線する隙間まで残るかを見ておく。ここは全部数字で確認できるところなので、調べれば防げます。
何にこだわるかで、寄せ先が変わる
ここまでの順番は誰でも同じですが、どこに金を寄せるかは人によって変わります。
静かさにこだわるなら、冷却と電源とケースにいきます。ファンの大きさと数、ケースの作り、電源の動作音。うるさいパソコンは、性能に関係なく毎日効いてきます。
フレームレートにこだわるなら、グラフィックボードと画面です。パソコン側だけ速くしても、画面が追いつかなければ数字は出ません。
やりたいゲームがはっきりしているなら、そのゲームに合わせて割り切るのが一番効きます。全部入りを目指すより、一本に最適な形にしたほうが、同じ予算で満足度は上がると思います。
少しずつ、上げていける
自作にはもう一つ、あとから育てられるという性質があります。
全部を一度に揃えなくていい。まずは動く形で組んでおいて、あとから一つずつ入れ替えていける。グラフィックボードを一段上げる、メモリを足す、SSDを増やす。丸ごと買い替えるのに比べれば、一回あたりの金額はずっと軽くなります。
そのかわり、最初に余白を残しておく必要があります。電源のワット数、ケースの大きさ、マザーボードの空きスロット。ここを詰めきってしまうと、あとで一段上げたいときに、周りごと交換になります。
僕も、途中でグラフィックボードを一段上げました。外した古いほうは、まだ捨てられずにいます。
この形自体が、変わるかもしれない
ここまで書いた順番は、いまのパソコンの形が前提です。マザーボードにCPUを載せて、グラフィックボードは別に挿す。
この形は、ずいぶん長く続いています。ATXという規格をインテルが決めたのが1995年で、1990年代の後半にはこれが普通になっていました。グラフィックボードを挿す口のほうも、1997年にAGPというものが出て、2003年にいまのPCI Expressへ変わっています。名前は変わりましたが、箱の形も、部品を別に挿すという考え方も、30年ほど動いていません。1997年ごろに買ったフルタワーのPCも、もうこの形でした。
それが変わるかもしれない、と思っています。
さっき書いたユニファイドメモリのPCが、Windows側にも増えてきました。増えている理由は、たぶんこれです。AIを手元で動かしたい人が増えたから。AMDも、AIの使われ方が変わったことでユニファイドメモリはもう特殊なものではない、という言い方をしています。NVIDIAとマイクロソフトも、CPUとグラフィックスを一つの塊にして、メモリを128GBまで共有できるものを出してきました。
この形になると、メモリは基板に直付けです。あとから足せない。グラフィックボードを別に挿す、という前提そのものが要らなくなる。もしこれが当たり前になったら、この記事に書いた順番は、たぶん役に立たなくなります。
一方で、据え置きのパソコンでは交換できるメモリがまだ残っています。メモリの値段が上がっているせいで、むしろ手持ちのPCを延命する人も増えているそうです。すぐに全部が置き換わる、という話ではありません。
もう一つ、こちらは完全に僕の勘です。AIを動かすのが当たり前になったら、Windowsの比率は下がっていくんじゃないかと思っています。自作の世界でも、Linuxを選ぶ人が増えるかもしれない。ゲーム側では、2026年に入ってからのSteamの調査でLinuxが4%前後まで来ていて、Valveが自社のOSをどのパソコンでも使えるようにすると言っています。ただ、この数字は月によって上下していますし、Windowsとの差はまだ桁が違います。大きな流れになったと言い切れるほどではありません。
これも勘の続きですが、こうなるとグラフィックボードそのものの形も変わってくると思います。いまは一枚の板を挿していますが、CPUと同じ塊に入ってしまうなら、選ぶ対象が別のものになる。
そうなったら、また一から調べ直しです。面倒かというと、たぶんそうでもありません。どう変わるのかは、いまはむしろ楽しみで、アンテナだけは張っておこうと思っています。
節目にいるのかもしれないな、とは思っています。
選ぶこと自体が、楽しいかどうか
最後に、これが一番の分かれ目かもしれません。
自作PCの楽しさは、組み合わせをいろいろ調べて、自分で選んでいく行為そのものにあります。この構成ならいくらで、こっちを削ればあっちに回せて、と机の上で組み替えている時間です。組み上がってからより、そこが楽しい。
ここが楽しいと思えないなら、正直、自作を選ぶ理由はあまりありません。同じ性能なら、組んで売っているものを買ったほうが早いし、動かなかったときに相談できる相手もいます。
逆に、その時間が楽しいのなら、順番は決まっています。何をやりたいかを決めて、予算の枠を置いて、CPU、グラフィックボード、メモリ。そこでマザーボードが決まったら、メーカーが動作を確認したメモリを選び直して、電源に余裕を持たせておく。あとは、こだわるところに寄せるだけです。
書いていて、ふと思いました。いまAIにのめり込んでいるのも、たぶん同じところです。何ができるのかを調べて、自分の使い方に合う形を考えて、組んでみて、駄目なら直す。机の上でパーツを組み替えていた時間と、やっていることがほとんど変わりません。
どうやら僕は、組み立てるほうが好きらしい。
この記事に出てきた言葉
- 言語モデル … 文章を読んだり書いたりするために作られたAIの中身。ChatGPT や Claude はこれを土台にしています。
- グラフィックボード … 映像や大量の計算を専門に受け持つ部品。ゲームだけでなく、AIを自分のパソコンで動かすときにも効いてきます。
- VRAM … グラフィックボードが自分用に持っている記憶領域。ここに載りきらない大きさのAIは動きません。
この記事は、AIの実践記から少し離れた、道具まわりの話です。ここで組んだパソコンが、そのまま毎日の仕事の土台になった話は『ゲームを始める前に、AIにどいてもらっている — Tarkovのために組んだPCが、そのまま仕事の土台になった』に書いています。